2020年05月16日

そうそう、浮世絵は、おもしろそう、たのしそう

浮世絵にはじめて興味を持ったのは小学生の時。切手です。見返り美人、写楽、このあたりは高い切手の代表格。手が届きませんでした。広重の蒲原も高かったなぁ。せいぜい歌麿のビードロとか…。それから大人になって浮世絵を観るようになりました。ゴッホとかの印象派の展覧会なんかで逆に日本の浮世絵を勉強し、だんだん北斎、広重、歌麿といった有名所じゃない絵師のも観るようになっていきました。なかでも特に気に入ったのが渓斎英泉です。彼の描く下町の娘や遊女は退廃的で、艶があり、顔に感情が見えます。つまりリアルさがあるんです。時代的には英泉は、歌麿より少し後で、北斎の最晩年と同じ時代なので、浮世絵界にも、少しずつ人物にリアルさが求められてきたせいかもしれません。また、英泉は私生活もドラマチック。酒と女を愛して放蕩無頼、花街で女郎屋の経営もやってたようでそれも影響あったのかな。
その彼の代表作のひとつが『今様美人十二景』1822年頃の作品。
これは美人大首絵12枚のシリーズで、描かれた女の性格や表情を「〜そう」と副題を記しています。こま絵(上の巻物の囲み)で江戸名所を付き。
この中の1枚を何年か前に入札会で手に入れました。
「しんきそう」
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ほかには
「あいそがよさそう」  「おてんばそう」  「おとなしそう」
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「てごわそう」    「きづかなそう」   「うれしそう」
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 があり、残りは 
「おもしろそう」「うわきそう」「しづかそう」
「くがなさそう」「てがありそう」の12個のようです。
ちゃんと確かめたことはないんですが…
上にあるこま絵は、美人絵と関連あるんですかね。よくわかりません。そもそも十二景という名はこの場所からきてると思うんですが、美人のみなさん部屋にいるし…。「でごわそう」には登るのに大変そうな山があったり、「おもしろそう」で隅田川の舟遊びの絵があったり…するから言葉遊びで洒落れてるのかな?…謎です。

まぁ、それにしても今から200年も前の江戸時代に版元と「次はおてんばいいんじゃない」とか「てごわそうもいれましょう。」なんて打ち合わせしてたのか〜なんて考えると楽しいです。
こういうシリーズものって、富嶽三十六とか江戸百とか有名なのは全部知ることはできるんですが、ほとんどは画集にも揃いでは載ってないし、浮世絵展でもシリーズでみられない。『今様美人十二景』をいつか12枚揃えることを目標にしてたのにまだ1枚のみ。貧乏じゃ無理ですわ。
タグ:渓斎英泉
posted by gutter at 18:19| Comment(0) | 日記

2020年05月12日

7日間ブックカバーチャレンジに誘われる

『7日間ブックカバーチャレンジ 』というのが、SNS上で流行っております。コロナで家にみんないるので、何かしらつながっていこう!読書文化の普及に貢献しよう!みたいな感じです。チェーンメールっぽいからお断りっていう堅物もいますが、こちとらお構いなし。で、7日間好きな本を紹介する 『7日間ブックカバーチャレンジ 』にのっかりました。チャレンジってほどじゃないけどね。そもそも7日間じゃ全然足りない、80日間世界一周しちゃうくらい紹介したいです。とりあえず影響された本を並べました。う〜ん小説が入ってない。

1.和田誠『お楽しみはこれからだ』
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キネ旬に連載されてました。映画の名セリフと似顔絵と和田さんのうんちく。映画好きになり、ゆくゆくデザイナーになる きっかけになった1冊です。なんどもなんども読んだのでかなりボロボロ。

2.高野文子『るきさん』
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ファンです。純粋にファンです。寡作ながら次回作にいつも驚かされます。そして全ての本が愛おしい。なかでも愛すべき一冊。サインしていただく機会があった時にまよわず『るきさん』を選びました。

3.フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』
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夢中になって読んだ本。児童文学でオススメするならこれですね。友人が入院した時にもっていく本の中に必ず入れ、喜ばれます。

4.植草甚一『スクラップブック』全40冊。
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日本の雑学の草分け。その植草さんのすべてが詰まったシリーズ。どんどん読みすすめたいんだけど、こっちの知識がなさすぎて内容の面白さが今ひとつわからない回ばかり。なのでまぁまぁわかる映画とかヒッチコックとか回だけ残してあります。付録で毎回手書きの日記が付いているんですが、これが面白い。スクラップブックは復刻版が出てるので手に入りやすいし、日記は日記だけを集成した『植草甚一コラージュ日記』が出てるようです。ぜひ。

5.滝田ゆう『寺島町奇譚』
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なにもかもが好き。「前略おふくろ様」というテレビドラマのタイトルバックに滝田ゆうの絵が使われていて、そこから本格的に読みはじめました。もう30年も前に亡くなってしまった方ですが唯一無二の絵。サイン本を持ってたんですが行方不明になり、しょぼくれてます。滝田ゆうさんは落語やお酒に関わる本も多いんですが、まぁ、まず『寺島町奇譚』

6.和田誠『倫敦巴里』
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またまた和田さんです。敬愛するおじさんに教えてもらったものすごい本。和田誠が似顔絵を描く画家というのは誰でも知ってますが、絵にとどまらず文体や作風、演出まで似せるとは驚きです。唸ります。あんまり凄いので古本を何冊も買って、わかってくれそうな人にプレゼントしてます。これも復刻本が出たのでお求めやすくなりました。

7.『チエーホフの風景』

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1904年に亡くなっているのに驚くべき量の写真と資料が盛り込まれた大著です。同時代の著名人と比べても圧倒的。こんなに写真が残ってる人がいるだろうか。チエーホフは写されるの好きですね。まあハンサムだし、ナルシスト。チエーホフが好きでこれから上演したい人はこれ一冊あれば充分。大満足の一冊です。


ブックカバーチャレンジ 番外編
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『Xへの手紙』

父が亡くなってもう20年以上になります。亡くなってしばらくして、父が育った明治に建てられた家を、市の区画整理でやむなく壊すことになり、そのいまにも崩れそうな本棚に残っていたのがこれ。父が大好きだった小林秀雄の『Xへの手紙』、昭和24年発行。青山二郎の装丁です。
『芭蕉俳句集』
父の叔父にあたる中村俊定先生が編纂された本です。芭蕉の研究家であった俊定先生は、親戚中から東京のおじさんとよばれ尊敬されていました。おじさんも亡くなられて35年以上経ちましたが、東京に出てきた頃は、雪ヶ谷の家によく遊びに行きました。大先生なので話を聞いてるだけでしたが
「おれが芭蕉やっとるのに、息子も孫も甥っ子も誰も興味をしめさなかった」と言ってたのを思いだします。
小林秀雄も芭蕉もこれまでは深く入ってこなかったけど…
少しこれから変わるのかな。
タグ:和田誠
posted by gutter at 18:25| Comment(0) | 日記

2020年05月11日

コロナの渦にのみこまれる

2020年になってからの1番の楽しみはオリンピックでした。なぜなら最初の抽選で陸上が当たっていたからです。
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いまはモチベーションが限りなく0に下がりました。そんなことより、仕事の中心である演劇が大きな渦にのみこまれてしまいました。

無名塾の『タルチュフ』東京公演。3月8日が初日でしたが中止になりました。
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2月末に早々と仲代さんが中止の決定をされました。この頃はまだ他人事のような感じでして、正直3月に入ってからの判断でいいんじゃないかと内心思ってましたが、決断が早く間違いなかったです。9年前は3.11が東京公演の初日でした。奇しくも同じサンシャイン。残念です。今回のパンフは、仲代さん特集をみてもらいたかったんです。仲代さんにも「盛りこみすぎじゃない」と言われたほどのボリューム。たくさんの人に届けたかったです。悔しい…。
その後3月に入って、しきりに感染後2週間空けるという期間がマスコミにとりざたされました。この2週間様子見るというのを、2週間経てば感染が収まると勘違いしていました。感染はカノンのように次から次へと新しい2週間を作りだし、次から次へと多くの舞台がのみこまれ、中止や延期においこまれました。演劇は三密の中でこそ味わえるもの、コロナの標的にされたような感じです。

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エイコーン 栗原小巻さんの『ピアフ』は3月から九州旅公演中でしたが、途中から中止に。テアトルエコーの『ママゴト』​は初日が4月18日。3月末にエコーからパンフの連絡がこないなと思ってたら延期に。5月の連休明けからは加藤健一事務所の『サンシャインボーイズ』が延期に。パンフ進行中でしたが色校正でストップ。まさか5月までと思ってないので、3月頃は、加藤健一事務所の人と「サンシャインは5月で良かったですね〜」と余裕で話していたのに…。加藤健一さん役者生活50周年、加藤健一事務所40周年といつ記念公演でした。どーすんの。

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6月の公演もすでに2つ。ひとつは無名塾の稽古場公演『サロメ』。チケット発売前に決断しました。もうひとつは旧友ケベちゃんの『半脱げの靴下』どちらもチラシは刷りあがっていました。小規模の公演は公演当日のほかに、稽古場が借りられないという問題もあります。公演当日はかろうじて大丈夫になったとしても、稽古場が使えないと公演できません。やれやれ。今はというと、おそるおそる進行中のものも何本か、7月からはじまるものも…。そろそろ渦から大きく飛びだし、のんびりと大海で泳ぎたいものです。
posted by gutter at 16:16| Comment(0) | 演劇