2017年10月23日

幌車を追っかけて能登へ その1

無名塾公演『肝っ玉おっ母と子供たち』のゲネと初日を観に、陸路で能登演劇堂へ向かった。まず、東京から金沢まで新幹線かがやき。東京駅で祭とよんでる駅弁広場で大船軒の鳥めしとお茶を買い、旅のお供は幸田文さんのエッセイ「雀の手帖」。車中で読むのは、こういう短くて洒脱なモノに限る。しばらくすると自分のまわりを会社関係っぽいの一群がワサワサと囲んだ。私服だけどくだけた感じはないので社員旅行ではないだろう。運よく隣に地味で静かな美人が座った。どういうところにお勤めの方だろうか?役所かな?会社だとしても地味目なお仕事でしょうかね。横目でチラチラ見るのはやらしいけど気にはなる。とりあえず幸田さんの雀は背もたれに挟まった。
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一群は長野で降り、こちらも雀を三つ四つ進めると金沢に着き、今度はサンダーバードに乗り換える。サンダーバード15号はかなりのロートルだ。このサンダーバードじゃ平和は守れないだろうが、平和な田園地帯をひた走る。こんどのお隣は通路を挟んでリッチそうなじいさんと上品なムスメさん。胸元の万年筆が矢印だ。仲良し親子の温泉旅行なのかな?と思ってたら、どうも会話が…お互いが敬語…他人行儀だ。もしや…そんなどうでもいい事を考えていたらアッちゅう間に和倉温泉駅に着いた。そこから線路の上を走るバスのような一両電車の七尾線に乗り換えて10分、ようやく目的地の能登中島駅。駅から能登演劇堂まではバスがなく、20分歩くかタクシーしかない。こんな不便な劇場はないかも。辺鄙な劇場をひと月満員にするところに意義がある。タクシー乗り場のようなものはないのでタクシーを呼ぶ。
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車がくる間に能登中島駅の構内を見学。さながら無名塾ポスター展のようだ。こういう時間の経った集中砲火はいたたまれない…恥ずかしさと反省をくぐり抜け、ようやく来たタクシーに乗り込み、肝っ玉が待つ演劇堂に向かう。ゲネまで1時間を切ったが、飛行機だと早く着きすぎて居場所に困るので丁度いい。演劇堂は肝っ玉の大看板がお出迎え、次々に登場するポスターをカシャカシャ撮りながら劇場に入った。
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タグ:能登演劇堂
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2016年06月06日

12人を一発で撮る

今度の加藤健一事務所公演は「SHAKESPEARE IN HOLLYWOOD」1934年のハリウッドが舞台です。ハリウッドで「夏の夜の夢」の映画を撮っていると、そこに本物のオーベロンやパックが紛れ込んでしまって大騒ぎ!というドタバタ喜劇です。まぁシェイクスピアインというか妖精インハリウッドですね。面白いのはモチーフにした「夏の夜の夢」の映画が、実際にあったってとこなんです。1936年の製作で日本でも公開されています。昔のシェイクスピア映画のバックステージものの舞台…かなりややこしいですね。その本物の映画の方はオリビア・デ・ハヴィランドやジェームス・キャグニーが出てます。オリビア・デ・ハヴィランドは「風と共に去りぬ」のメラニーなんかで有名な女優さん。アカデミーの主演女優賞を二つも取ってます。「レベッカ」で主演女優賞をとったジョーン・フォンティーンは彼女の実妹にあたり、美人姉妹女優として活躍しました。いまだに唯一のアカデミー主演賞をとった兄弟姉妹です。キャグニーは言わずと知れたギャング映画のスター、ついキャグニーなのかギャグニーなのかわからなくなりますがキャグニーです。

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さて、チラシの撮影。布に切り込みを入れて、そこから顔を出して撮影することは決めてたんですが、1人ずつ撮るか列で撮るかで迷ってました。それでテスト撮影してみたら、1人でも列でもバラバラに撮るとシワがムチャクチャになって上下左右のシワがまったく合わないことがわかりました。自分の技術では合成が大変で不自然に…まず無理かも。それですべてのカットを一発写真で撮ることにしました。もちろん使用した写真は撮った写真の中からそれぞれ選んでいます。

さてさて撮影です。まず110cm幅のブロードを12m(4m×3本)買ってきて、横につないでお手製布バックを作り稽古場に吊るしました。それから背後に押し合いへし合い三列に並んでいただき、裏から布に顔や手を押し付けてもらってあたりをつけ、カッターで前から切り込みを入れ、そこからひとりずつ顔を出します。ぴょこぴょこ顔が出た時に面白くてイケルなと確信しました。しかし実にアナログ。手作り感満載。真ん中の列が中腰で顔を突き出すので体勢が一番きつかったですね、すみませんでした。無理をしてもらいましたが一発写真てやっぱりお互いの気持ちの交流が見えていい感じ。合成と一発では上がりに違いが出るような気がします。あっカチンコも出演者のマネージャーさんに協力していただき一緒に撮ったので実は13人。みなさん本当にありがとうございました。
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2016年01月29日

背中をごらんあそばせ

無名塾は長い巡演(約半年)ということもあり、スタッフジャンパーを作ることが多いんです。公演が始まり、楽屋に挨拶に行くとスタッフのみならず、仲代さんはじめキャストもみんなスタッフジャンパーを着ています。自分は事務所で寒い時に羽織る以外は着ないんですが、みんなが自分のデザインしたジャンパー姿で劇場中を歩いているのをみるのはとても嬉しく楽しい光景です。
デザインは、背中にタイトル、作演出家、仲代さん、無名塾が英語表記で入るのが基本です。
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『マクベス』のように仲代さんが書かれたカタカナの場合もあります。『ロミオとジュリエット』の時は能登バージョンはポスターと同じカタカナタイトルでしたが、巡演用は英語になりました。手前味噌ですが、どちらもイイですね。
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その他の要素としては演目を意識したカットなんかをあしらってます。色は2色。紙の印刷のようにはいきませんが、希望を言って塗料を組み合わせ、練り合わせて近づけてもらっています。色校は出ないので版下データを作ったらあとはおまかせ。頼んでいるのはずっと清水色彩さん。お会いしたことはないんですが、とても真面目な方で工夫もしてくださり安心です。ネットで同じようなプリントしてくれる所はたくさんありますが、直接電話で話せるし、色が微妙な場合は布地に刷った見本を送ってくれます。ジャンパー自体の色は黒が落ち着くってことで黒。
で、今回の『おれたちは天使じゃない』はこうなりました。
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ジャンパーは出来上がったら巡演中の旅チームに直接届きます。こちらには見本はしばらくこないので、旅先に誰かのジャンパー姿を撮って送ってください と頼んだところ
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…おそれ多いです。デザインはちょっと冒険でしたがいい感じに仕上がりました。
東京公演は3月5日から13日まで世田谷パブリックシアターで。観劇前後と休憩中に動きまわってるスタッフの背中にも御注目ください。
それから、もう売り切れの日が多いようなんでチケットはお早めに!
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2015年11月05日

20世紀初頭の演劇と無名塾

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おれ天パンフ

「おれたちは天使じゃない」の設定はいまから105年前の1910年です。
この年は、1900年のパリ万博から10年経ち、ヨーロッパはベルエポック真っ盛り。フランスの田舎で「炎の人」のゴッホが亡くなって20年が経ち、ロートレックやゴーギャンもすでに鬼籍に入られましたが、彼らがもし生きていたとしたら60歳前後。なのでパリに捕まる前のジョゼフ(仲代さんの役名)とゴッホが一緒にいても不思議じゃないことになります。同じ年くらいかもしれません。ジョゼフならゴッホの絵をなんなく売りさばいていたことでしょう。
スウェーデンの劇作家イプセンは1906年に亡くなっているので、「おれ天」の1910年よりちょっとだけ前の世代。「ソルネス」を1892年、「小さいエイヨルフ」を1894年、「ジョン・ガブリエル・ボルクマン」を1896年に書き上げています。そこへいくと「授業」のイヨネスコなんて前年の1909年に生まれたばかりの1歳。フランスが前衛に染まっていくのはまだまだ先、やっとアールヌーボーに入ったあたりです。「セールスマンの死」のアーサー・ミラーはイヨネスコよりさらに下で生まれる5年前、まだ商品を売り歩くより、店を構えていればよい時代でした…パリでもカイエンヌでも。
ぴったりの1910年ってことなら日本に縁のいい方がいらっしゃいました。黒澤明監督です。この年に生まれました。
1910年は明治43年になります。
同じ年、イギリスでは「ホブソンズ・チョイス」のウィリアムとマギーが引き継いだ靴屋を繁盛させていて、アメリカでスターと聞けば誰もが「バリモア」の名を上げているでしょう。1910年の彼は前途洋々とした28歳。酒浸りでもなく、無名の女優キャサリン・ハリスと最初の結婚をしたばかりです。

日本の演劇界に目を移すと小山内薫が、1902年にロシアのゴーリキーによって書かれた「どん底」をモスクワ芸術座で観劇していました。
1900年に書かれたチェホフの「三人姉妹」に100年後200年後の未来の人々の生活について希望や不安をのべる場面が出てきますが、100年前の活気に満ちた20世紀初頭を無名塾のお芝居と巡るのも面白いのです。
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2015年10月23日

熊さんとチラシ

みんなに愛されてた熊さんがいなくなってしまいました。

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熊さんをこれまでに三回撮影して、三枚チラシを作りました。その撮影写真です。すべてエコー劇場の舞台上。2002年の『サンシャインボーイズ』は上手のそで前、2009年の『お手を拝借』は下手のそで、そして『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』は舞台センター。どれも予算がなくてしかたなく…とかではなくアイデアがあって舞台上になったもの。衣裳、稽古着、私服と着ているものも三様に分かれていて面白いですね。
お芝居の『サンシャインボーイズ』で思いだすのはお尻をチョンとのせて腰掛けるとこ、なんともカワイくって思いだし笑いしちゃいます。『お手を拝借』は最初の登場の客入れ挨拶が面白かった。注意を呼びかけるはずが「携帯電話なんかジャンジャンならしちゃってください」ってあの声で。騎士は幻になりました。
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また2010年の『日本人のへそ』は村田篤司さんにラフなタッチで似顔絵を描いていただきました。へその熊さんのたたみかけるように喋る膨大な台詞、スゴかったです。台本読んだ時、これはテープかな?と勝手に予想してたんですが生でした。失礼でした。

振り返ってみると、チラシに何か注文つけられたこともなかったです。ですが、こちらはいつも反応を気にしてました。エコーのチラシをやるようになって14年。一度くらい聞いとけばよかったな。
熊さん、どこを遍歴してるのでしょうか? とても良いお芝居になってますよ。ありがとうございました。
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2015年09月11日

10月は舞台イベント三昧…いや七味

やっと東京は晴れました。台風一過の秋晴れかと思ったら夕方にまた雨。異常気象なんでしょうか?水害に遭われた方々が無事で安心して暮らせる日が早くくるよう願ってます。
仕事の方は忙しくしてます。今年はありがたいことに10月に上演する舞台やイベントがメジロ押し。なので八と九は大忙しなんです。しかし、メジロ押しっては見たことがない。だいたい二羽、多くて三羽で動いてるんじゃないのかな。寒い時期にカタマッているんだろうか?ムクドリ押しならありますが…。
それました、戻します。関わっているメジロ押しの10月なんですが、ダブってる期日もあります。厳密に言えば、競合同士の広告を制作してることになりますが、それぞれの成功を願い、両方に行ってくださいと切に思っているのでお許しくだされ。

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10月8〜11日 加藤忍一人芝居「花いちもんめ」
加藤健一:演出 出演:加藤忍 下北沢駅前劇場

10月10・11日「たまがわストリートアート」&「ふたこ座」
今最も旬な蔦屋家電もある二子玉川ライズ周辺で行われるイベント。
マーケットやワイナリービレッジとの同時開催です。

10月16〜28日 テアトル・エコー「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」
作:別役 実 演出:永井寛考 恵比寿・エコー劇場

10月17・18日「三茶de大道芸」
おなじみ三茶の大道芸。街とイベントが本当にいい感じに練れてます。

10月28日〜11月1日小宮孝泰ひとり芝居
「線路は続くよどこまでも」作・演出:鄭義信 出演:小宮孝泰
感動の舞台が帰ってきます。下北沢楽園

10月31日〜12月6日 フェスティバル/トーキョー15
SPAC、岡田利規、飴屋法水はじめ海外のアート系演劇の祭典。
東京芸術劇場等

10月31日〜2016年4月29日 無名塾
「おれたちは天使じゃない」演出:丹野郁弓 出演:仲代達矢ほか無名塾
初っぱなは能登、東京はさんで全国に…半年に及ぶ旅公演です。
写真は東京用チラシ
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2015年08月07日

ダンサーにもらった本

今年「別役実フェスティバル」ということで別役作品をあちこちでやっています。日本の不条理劇を確立した前衛演劇の先駆者。こういう企画に色んな劇団が参加するのっていいですね。わかりやすい演劇しか観てこなかった人にぜひ観てほしいです。自分もテアトル・エコーの『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』に関わることができました。

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自宅の本棚にも一冊、別役さんの脚本があります。一緒に写っている単行本は、仲代さんが小劇場に出た記念作、安部公房の『愛の眼鏡は色ガラス』や井上ひさしの名作『天保十二年のシェイクスピア』などなど12冊。
これらはもう30年くらい前になりますが、まとめて頂いたものなのです。そのころはまだお芝居をやっていました。ある日、ダンスを習ってる友達から、ダンスの先生が芝居の本をもらってくれる人を探しているんだけど市川くんどう?と言われ、あまり考えず、もらえるものならと取りに行ったんです。
本の持ち主は菅原鷹志さんでした。
「いや〜オレも演劇青年だったんだけどダンスの方にいっちゃって、もういいからさ〜…なんか、読んで活用してくれる若い人にあげたいんだよね」
見ると単行本が並んでいました。菅原さんが興味があったジャンルがわかります。従来の演劇のスタイルを壊した戯曲の数々。
菅原というハンコが押してあるものもあります。
「…こんなにですか?」「いいよ、持てる?」「ハイ、大丈夫です」
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菅原さんとはそれ以来会っていません。本を活用するどころか早々に芝居の現場から離れました。また酷いことに、前衛に属する脚本は読みにくいこともあり未だ読んでいないものもあります。ただ何度引っ越しても、いつもまとめてずっと本棚にありました。この手放さなかった本たちが、芝居の世界と切れずに繋いでいてくれた気もします。

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2015年05月11日

捻挫で足掛け上がり

1月末に白内障の手術した後ですが、眼は縫合できないので1週間は風呂に入れず温泉なんてもってのほかでした。3月頭になってやっと温泉OKでたもんだから調子こいてわずかに雪残る温泉地へ。そこでまたやっちゃいました。つるつるのツルツルの道でこけて左足首捻挫、で、ギプス。またまた風呂にちゃんと入れず…鉄棒の足掛け上がり状態。背筋にけっこうきますよアレ。
捻挫と言えばはるか遠い昔に同じような事がありました。シアターナンチャラを発行しているアサゴハンっぽい名前の会社にいた時ことです。北海道へ社員旅行に行ったんです。(その頃はねぇ〜ありがとうございました)
その日は登別温泉に泊まりでした。昼間は自由行動で何人かとクマ牧場へ行くことになったんですが、ちょっと風邪気味。クマ牧場行きロープウェーの入口に薬屋があったんで風邪薬を買っていると大きな声で呼ばれました。
「急いで、急いで〜クマ牧場4時半が最終だって〜」
ロープウェーの最終便が4時半というんです。見れば4時28分。あわてて釣り銭を掴み走り出したら、前の路肩で思いっきり転びました。
遠くで呼ぶ「急いで〜」に笑い声が混じります。
捻ったな はっきり感覚としてわかりました。
足はジンジンしてきましたがなんといっても登別といったらクマ牧場、行かないわけにいきません。それなりに楽しんで帰りにまた同じ薬屋によって湿布を買いました。温泉も北海道まで来て入らないわけにいきません。ダメとわかってても入りました。開湯以来、大浴場で右足外に出して足掛け上がりやったのは私だけじゃないでしょうか。
この時に右足首はギプスをしなかったこともあり3本ある靭帯のうち1本がいつの間にか切れて無くなってしまいました生活に全く支障はないんですけど、はげしい運動する時はサポーターをした方がいいようです。かなり前の事ですが、この右足の事があるので今回の左足はギプスになりました。面倒でも捻挫はギプスなんですね。

足が不自由な間(2月〜4月)事務所はおかげさまで怒濤の舞台まみれ、足掛け上がりで10回ぐるんぐるん回っちゃったくらい猛烈に忙しかったです。
無名塾は「バリモア」「おれたちは天使じゃない」それとホームページのリニューアル、子供のためのシェイクスピア「ロミオとジュリエット」、加藤健一事務所「ペリクリーズ」のパンフに「バカのカベ」「滝沢家の内乱」、テアトル・エコー「けっこうな結婚」、トロデトロ「ぺてん」、加藤忍一人芝居「花いちもんめ」それと現代音楽の祭典サントリーサマーフェスティバル、なんとかつつがなく納品できました。
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http://www.mumeijuku.net/
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もう過ぎてしまった舞台もありますが、どの舞台も成功しますように…

それから6月完成予定のPOPUP BOOKを明日入稿です。これはすんごく大変だったんですが、とっても面白いものになりそうです。

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2014年11月12日

ブロードウェイで二十ン年振りの出会い

加藤健一事務所の今年最後の公演「ブロードウェイから45秒」が紀伊國屋サザンシアターで絶賛上演中です。初日前にチラシを折り込みにいった二つの劇団の制作さんから別々に、ロビーがスゴイですよと言われました。二人から言われたんで何がそんなにスゴイのか気になって気になって…初日観に行ってわかりましたよ。迫力!これは確かにロビーがスゴイ、驚きました。どんなにスゴイのか気になった方はぜひ劇場へ!もちろんロビーだけじゃなく芝居もスゴく面白いです、15日まで。
今回の公演の演出家は堤泰之さん。小さいものから大きなものまで演られている人気の演出家さんです。実はデザイナーの仕事をはじめてなかったかほんのひよっこの頃、堤さんの劇団ネバーランドミュージカルコミュニティの解散公演のチラシを作った事があるんです。二十ン年前です。「天使の羽が降る日に」紀伊國屋ホールでした。解散公演で紀伊國屋ホール、小劇団の中でも人気のあった劇団でした。よくペーペーにやらせてもらったなぁと思います。その頃はまだMACとか使ってなくてタイトルを定規とロットリングで書いたのを覚えています。ビジュアルの写真をワザと荒くしたかったので写真をカラーコピーして入稿しました。技術は無いけど若気がタップリだったんです。至っておりました…現物はどこにあるのやら…
稽古場におじゃましなかったので初日の打ち上げの席が堤さんにお会いした最初でした。「実は…」と切り出したら、堤さんの方から「昔お願いしましたよね、チラシに名前があったんでいつお会いできるかと…」言われビックリ。覚えていただいてたとは…嬉しかったです。二十ン年経ってまたご一緒出来る幸運に感謝。また次が出来ますように…早く…ン年の間に…
加藤健一事務所のお仕事に関わって3年ちょっとなんですが、年間4本ペースなんでもう12本。制作する中で一番といっていいくらい楽しんでやっているのがA5横サイズのパンフレット。
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作品の延長線上をイメージしてけっこう自由にやらせていただいています。チラシと同じビジュアルでやったり、写真を借りたり、撮影したり…今回のはポスターの真ん中のタイトル部分に使った写真を流用しました。ちょっと前のブロードウェイ、脚本が書かれた頃だと思います。これも初日の席で則子先生に裏面に吉野家が写っていることを教えていただきビックリ。
ロビーが気になって、パンフの吉野家を確認したい方、もちろんニール・サイモン初演をカトケン事務所で観たい方はサザンシアターまで。
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2014年11月05日

「バリモア」初日

11月3日、仲代さんはこれからアラモ砦に一人で立つ。

観る前、いつになくドキドキした。なにしろ1時間40分もの間舞台にひとり、膨大な膨大なセリフ量だ。
もしかしたらダメなところを今日観ることになるかもしれないという
、とても失礼な部分を含んだドキドキだ。

しかし、舞台に出てきた一瞬でドキドキは吹き飛び、引き込まれ、
圧倒された。舞台が開いてまもなくだった。
ほろ酔いでゴキゲンなバリモアが診療鞄を持って登場する。
中から出たのは二本の酒瓶。それを右手の指にぶら下げ話はじめたかと思ったら、「ガッシャン!」
酒瓶同士がアメリカンクラッカーのようにお尻がぶつかって割れた。
瓶の底がきれいに抜けお酒はまっすぐ舞台の上へ。
瓶の底だけぬけて、滝のようにお酒が流れたのがキレイだった。ガラスも散乱している。
仲代さんは酔っぱらってフラフラしながら大きな破片を拾いあげ
「あ〜もったいねぇ」
ハプニングなのだ。仲代さんはとんでもなかった。

ほとんどの人が演出だと思っただろう。
セリフを飛ばそうが忘れようが、もうどこから切ってもバリモアだ。演じることに捕われ、演じる事が出来なくなった役者の老醜を1時間40分ぶちまけた。
終演。
観る前と違うドキドキに強く襲われた。手伝いに何人もの教え子たちが来ていた。
何も言わなくてもみんなの顔を見たらわかる。
81歳の師匠に打ちのめされたことが
誇らしくてしょうがないのだ。
仲代さんはいつも手の届かない場所にいる。楽屋で感動した教え子が「バリモアと仲代さんが一致してました」と声をかけると、ドーランを落としながら
「バリモアだと思ってやってないから」と一言。
映画スターであり、最高のシェイクスピア俳優であり、演じる宿命を背負った役者。バリモアとは仲代さんそのものだった。
今回はうまく出来たと思ってたポスターが、舞台上の仲代さんにかき消され
これで良かったのかと不安になってきた。
それでもこの作品に関われたことを誇りに思う。
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2014年10月23日

旅日記とベスト10

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「バリモア」のパンフレットです。
「バリモア」といえば偉大なる横顔と呼ばれたお方。バリモアの偉大なる横顔って左側だけなんです。正しくは偉大なる左側の横顔。バリモア本人の右側の写真がほとんどないので、右がどのくらい偉大じゃないのかがわからないんですが、なにしろ左がお気に入り。仲代さんはどちらもステキですが
バリモア役なんでやっぱり左側。ポスター写真から剣をとり横顔をシンボリックにトリミングしました。
今回の公演は無名塾のいつもの公演とはちょっと趣が違います。出演者も少ないし公演数も少ない。予算も小規模なんでパンフレットのページ数も限られます。限られるとかえって張り切って、いつもと違う事がやりたくなります。たいがいの演劇のパンフレットって、演出家の挨拶、出演者の写真とコメント、作品の教養的裏話に稽古場写真。だいたいこのパターン。演劇のパンフレットを毎月のようにやるんですが、こればっかりではつまらない。
今回のパンフレットは、仲代さんも大挑戦ですし、こちらもちょっと変えてみました。
ジョン・バリモアと仲代さんとは共通点は多く、一番は数多くの映画に主演しながら舞台俳優でもあり続けたところです。そこで「舞台」と「映画」という切り口で面白いものが出来ないものかと考えました。
ポスター撮影が終わった後、観劇のため渡米されることがわかっていたので、観劇コメント入りの旅日記はどうだろうと思い提案すると快よくOKいただきました。それが舞台の切り口
「仲代達矢の愛するブロードウェイ」
仲代さんのロス&ニューヨーク15日間の旅日記です。ブロードウェイの舞台は8本観劇。
映画祭でインタビュー受けたり美術館めぐりなどもあり、スナップ写真満載の楽しい内容になりました。普段着の仲代さんがニューヨーク闊歩しています。
もうひとつの映画は仲代さんが好きな洋画を教えてもらう企画にしました。
「仲代達矢の恋したスクリーン」
仲代さんに、主演された映画の事を聞くことはあっても。好きな洋画のことを聞いたものはほとんど見た事がありません。なにより自分が聞きたかった。仲代さんは俳優を志した若い頃、むさぼるように毎年300本もの映画を観ていたそうで、その中から忘れられない10本選んでいただきました。ベスト10から惜しくももれたんですが番外選んでいただいのが「春の珍事」。まさかこの映画を選ばれるとは…何回も観ても大笑いされたそうです。内容は、野球好きの科学者が期せずして作った「木材を嫌う魔法の薬」これを野球のボールに塗るとバットをよけて全部ストライクになってしまう。科学者はメジャーのピッチャーになり、ついにワールドシリーズに!というとんでもない話。明らかにB級。でもこれを選ぶ仲代さんてステキです。
今回のパンフレット、ほんとに面白い内容になりました。観劇の記念にぜひ!
といっても残念ながら
東京公演は完売のようです。
10月31日の北本公演がまだチケットがあるようなのでお急ぎください。
タグ:バリモア
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2014年08月04日

関係図も100%

子供のためのシェイクスピアのイラストを描いている100%ORANGEさんなんですが、ポスターのほかにもうひとつ毎回描いていただいてるモノがあります。それが関係図(相関図)です。
お気に召すまま          シンベリン
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基本的に年齢とストーリーの情報だけで自由に描いてもらってるんですがこれがスゴくいいんです。変に役者さんに似せたりせず、衣裳とかも舞台上のモノとは関係なく描いてるからORANGEさんの魅力たっぷりです。

ヘンリー六世から
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ORANGEさんでオシャレでカワイくて力が抜けきってたイラストのオンパレードです。この関係図でTシャツつくったら面白いかも。
さて、今回のハムレット、基本的に前回のハムレットの流用なんですが1人だけあまりにもその役をやる役者さんの雰囲気と違っていたので微妙に修正してもらっています。それは誰でしょうか?
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わかった方連絡いただければ100%ORANGEさんが子供シェイに描かれたものの中からお好きなポスター差し上げます。(パンフレット二冊持ってる方対象になっちゃうんでかなり狭いんですが…)

子供のためのシェイクスピア東京公演は9月11日からあうるすぽっと。
よい席はお早めに!
posted by gutter at 18:23| 演劇

2014年06月30日

この夏は100%なハムレット

いよいよ7月2日から子供のためのシェイクスピア「ハムレット」が始まります。7月2日の横浜KAATから9月15日の東京あうるすぽっとまでの夏公演です。今年はシェイクスピア生誕450年で子供シェイが20周年。キリがいいアニバーサリー公演になりました。それでデザインなんかの参考資料として過去の色んな「ハムレット」のパンフを集めていたら、凄いの見つけました。俳優座の50年前のパンフレットです。

ham1964.jpg  ハムレット2014.jpg
これ、なんとシェイクスピア生誕400年で俳優座が20周年。何たる偶然、50年前に20周年とは。記念の20周年といえば「ハムレット」なんでしょうか?
しかもハムレットが仲代さん。子供シェイには俳優座の佐藤あかりさんが出ているし、なにかと縁があります。ちなみに俳優座版はクローディアスが小沢栄太郎さんでガートルードが東山千栄子さん、オフィーリアは市原悦子さんで平さんはホレーシオ…凄すぎる。劇場中継とかが無い時代なんで映像があるわけもないと思っていたら…あるんですって。教えていただきました、ありがとうございます。50年前の「ハムレット」観たいですね。
さて子供シェイの20周年です。7年目からマゼていただきまして、2004年からはメインのビジュアルを100%ORANGEさんにお願いしています。新潮文庫のYonda?パンダや絵本なんかで絶大な人気のORANGEさん。イラスト好きでORANGEさんを知らない人はいません。いたらもぐり。どこをもぐるのかわかりませんが…そのくらい大人気。どこからか嗅ぎ付けて劇場にポスターだけ買いにくる100%なファンの方もいらっしゃるとか…(その方へ→今年は観てください。)

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マクベス.jpg お気に召すまま.jpg 冬物語.jpg ヘンリチャ.jpg ジュリアス・シーザー.jpg

ORANGEさんには普段描かかれているものとは違う角度で捉えたものをと頼んだりしているのですが、いつもこちらの想像を超えた素晴らしいものを描いてくれます。10年分観ると、これも100%ORANGEさんなの?って感じられる作品もあり、さすが懐が深いなぁと思います。
今回は十字がモチーフ。デンマークの国旗も十字なら、剣も墓も十字。ハムレットのまわりには悲劇に捧げる十字が渦巻いています。450年で20周年の「ハムレット」ぜひ!100%なパンフレットにTシャツもぜひ!
ところで、20周年の次のアニバーサリーはいつだろう?って考えました。25か30か、ずいぶん先だなぁっと思っていたら、再来年の2016年はシェイクスピア没後400年ですって。生誕があれば没後があるわけですね。これまた50年前の没後350年にどこかの劇団が何かやってたんでしょうか?気になるなぁ。また子供シェイで記念公演をやることになったら、もはや執念。でもやるかも。
タグ:俳優座
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2014年04月28日

同じ作品にする違うアプローチ

グラフィックデザイナーやってますって言うと、横尾さんみたいな〜?とか言われたりしますが、違います。あの方はアーチスト。和田さんみたいな〜?は、キモチ近づきましたが、やはり大きく違います。我々はクライアントの意向にそって仕事をするアプローチ型のデザイナー。横尾さんや和田さんのような唯一無二の作品を作り、見れば誰の仕事なのかすぐわかるモノとはちょっと違っています。もちろんそれでも、自分っぽい個性は隠しても出ます。ぽいが出るから仕事が発注されるのかもしれませんが、ぽいものもにじませながらも精一杯アプローチします。
演劇のチラシを作っていると同じ脚本の作品にあたる事があります。それぞれ、制作や出演者が異なり、作品の捉え方も違うのでアプローチの方向も変わってきます。当然ビジュアルも違うものになります。

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6月の公演、テアトル・エコーの「おかしな二人」はそんなケース。左側のは、ずいぶん前にやったものですが、登場人物二人のキャラクターをイラストにしました。オシャレなイラストはソリマチアキラさん。右側の今回のテアトル・エコーのも最初はイラストを考えたんですが、ニューヨークの写真はどうかと提案され、作品が上演された当時の1966年のタイムズスクエアの写真をレンタルしました。現在のニューヨークを撮るのもありかと考え、ニューヨーク在住のカメラマンにロケハンしてもらったんですが、やはり時代の匂いには敵いませんでした。ジャック・レモンが歩いてそうですね。

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去年やった「あなたに会えてよかった」は原題が「Communicating Doors」これも実は以前エコーで「ドアをあけると…」というタイトルでやってます。出演者とテーマに重点を置いた方向とサスペンス調に仕立てられた本の内容にそった方向。まったく違いますが、それぞれのお芝居には合っていました。

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2009年は大変でした。子供のためのシェイクスピアと無名塾が同時に「マクベス」をやる事になったからです。無名塾マクベスは仲代さんをどう撮影するか、子供マクベスは100%ORANGEさんのイラストでどうギミックのある絵にするか。これも全く違うアプローチのビジュアルになりましたが、共通なのは色。黒と赤、不思議です。

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7月〜9月に公演がある「ハムレット」は10年前の再演です。こういうケースもあります。これはカンパニーが同じなので方向性も同じ。イラストはいつものORANGEさん、とここまで同じなのですが、ビジュアルも同じじゃつまらない。今回はオフィーリアを入れてもらいました。前回は苦悩が全面に押し出されていますが、今回のはハムレットの内に潜むオフィーリアへの優しさが感じられてステキな仕上がりになりました。
ぽい話になりますが、こういったおんなじ作品がきた時、もちろんディレクションは自分がやるのですが、デザインまで同じ人間がやるとぽいが出過ぎるオソレがあるんで事務所内で分けてます。違うアプローチを持った作品は、違ったぽいの仕上がりで育っていくのです。
posted by gutter at 20:56| Comment(2) | 演劇

2014年03月14日

同じ衣裳で7歳から75歳からまで

カトケン事務所のお仕事を始めて2年半、9本目になる公演「あとにさきだつ うたかたの」が本多劇場で上演中です。
今回の公演は特別。なぜなら自分のホームグラウンドのひとつ「子供のためのシェイクスピア」の演出をしている山崎清介さんが加藤さんのお父さん役で出演するし、子供で演出補を担当している小笠原さんが今回の演出。さらに脚本の山谷さんも子供に2回も出ている。コラボとまでいかないけど融合度合いが深く不思議な感じです。だからなんとか…とのぞんだ舞台だったんです。ですが、劇場の中に入るといつものカトケン事務所公演に比べて観客席にスキマが見える。ちょっとガッカリしました。宣伝に関わっているものとして肩身が狭く申しわけない。もちろん能力の無さもあるが、原因はほかにもあるような気がする。カメか?カメじゃだめだったのか…
何が足りなかったのか?始まるまでの時間に考えましたが、今回メッセージ性の強い内容なので、あたたかく面白いお芝居になれたカトケンファンの食指が今ひとつ動かなかったとしか思いつかない。
演劇は日常の癒しなのか? 安らぎの場なのか? エンターテインメントじゃないと観たくなくなるのか?
いやいや、劇場は一緒に考え、悩み、探す場でもあるはず。審判から始まった加藤健一事務所。問題定義したい気持ちはいつも持ち続けていたのでしょう。あえて社会派の戯曲を選び劣勢に挑む加藤さんに拍手を送りたいです。問題定義した作品においても足を運ばせる何かを制作物に盛り込まねばと気持ちを新たにしました。この注目作を書き上げたのは文学座の女優でもある山谷さん。やわらかく透明感のある美しい女性の中心には、ゴツゴツして頑丈な魂が座っています。

チラシとパンフ
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舞台上に見えるのは老い先短い老人。
加藤さんはその同じ衣裳のまま、7歳から75歳までを演じています。戯曲を読んだ時は想像がつかなかったんですが、舞台上に違和感はない。やがて子どもも老人も一人の人間にすぎない事に気づかされる。観終わって、やりきれなさと消えない希望の光に涙が溢れてくる舞台。
カメは、カメで良かったです。むしろカメ以外考えられない。カメを描いてくださった、ささめやゆきさんありがとうございました。

初日打上げで
「子役ははじめて。あとやってないのは少女だけだよ」とふざける加藤さん
「クラウド・ナインがありますよ」と真顔で返す父親役の山崎さん
加藤さん、まんざらでもなかったです。
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2013年11月07日

役と役の間をわざと歩く

小宮さんの怒涛のひとり芝居三本立てが終わりました。70分、90分、110分、合わせて4時間30分。恐れ入ります。結局「線路は〜」の一本だけ観たのですが、この芝居で新たな発見がありました。
それは歩いて役柄を変えるという試みです。
具体的にいうと、
駅長と小宮助役の会話(台詞は適当です)

下手前に駅長立っている。
駅長「小宮く〜ん、日誌どこにしまったかな?」
5歩上手奥に歩いて移動、振り向いて
小宮「あれ、金庫になかったですか」
5歩下手前に歩いて戻って振り向いて、駅長台詞…

この5歩歩く間は駅長でも助役でもない。素か無です。最初は観ていてとても違和感がありました。落語の手法に近いんですが、落語は動かないんで違う人物に変わる時間がほとんどない。それに対して今回のは歩き移動なんで長い。お客さんも歩いている間は待っているしかない。
               
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舞台写真 御堂義乗さん  7〜8歩も歩けば横ぎれてしまう小さな劇場。 

劇評なんか読むと、これなら二人でやるか、演出方法を考えた方がいい。という意見もあったんですが、ところがどっこい、この歩いて役柄を変えるのが演出家鄭さんの狙いなのです。従来の演出に慣れすぎた評論家にはわからなかったんでしょう。わざとじゃなくこんな事やるわけがない。この歩き移動は最初はイライラしますが、次第に気にならなくなります。なぜか?答えは簡単、徐々に距離を短くしてるから。30もの役で広がっていった芝居が、進むにつれ駅長夫婦に焦点があたり、夫婦を中心に狭く深くなっていきます。それに合わせて歩く距離も短くなっていき、観客の感情移入も近く深くなっていくのです。小宮さんに聞いたところ
「演ってる方は歩いてる間、ものすごく恥ずかしいんだよ。」
「歩き移動のダメだしが多くって…」
わざと歩く。ちょっとビックリしましたが、やられました。
posted by gutter at 19:46| Comment(0) | 演劇

2013年10月28日

ひとり芝居を三本やる小宮さん

小宮さんのひとり芝居「先代」のチラシを今年はじめにやったんですが、その時この凄い話を聞かされました。過去にやった二本のひとり芝居と合わせて三本を連続上演する企画があるというんです。思わず聞いちゃいました。

「まさか一日に三本連続じゃないでしょう?」
「オレもね、さすがにそれはキツいと思ってるんだよ」と小宮さん
「…ですよね。他の二本は?」
「接見はそんなに長くないけど…線路が1時間45分くらいある」
「1時間30〜2時間近く三本…4時間半…大丈夫ですか」
「線路は一本だけでも終わったとたん死んじゃうんだよ。
その前に二本は無理…ぜったい無理だよ…」
「…ですよね…ちょっと観たいですけどね」
「厳密に三本連続っていうと…そうなんだけど…制作もねぇ、どうせ三本なら連続って言うんだけど…無理じゃない?…無理でしょう!…無理だろう…」

その三本連続が実現しました。
無謀とも野望とも希望とも言える挑戦が今週末あります。

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小宮孝泰ひとり芝居三本立て
2013年10月31日(木)〜11月4日(月・祝)下北沢 楽園
ひとり芝居の三本連続上演です。
信じられません。
その三本の作演出がそれぞれすごい。
水谷龍二作・演出「接見」
鄭 義信作・演出「線路は続くよどこまでも」
中島淳彦作・演出「先代」
この売れっ子3人の小宮さんへの書き下ろし作品。
凄すぎる。楽園じゃもったいないです。この三人に頼める小宮さんも凄い。

で、連続上演はというと、基本一日二本なんですが、なんと11月4日は一日に三本、13時「接見」、15時「先代」、19時「線路は続くよどこまでも」

大丈夫でしょうか…小宮さん
芝居って規模じゃないなとつくづく感じます。

どーでもいいことだと思うんですが、小宮さん、この三本のタイトルの頭文字をセで揃えてます。だから?と言われそうですが、その変なこだわりがお笑いの人だなぁと思いました。
春に荒川遊園に置いてあるで路面電車を借りて撮りました。写真は御堂義乗さん。美輪さんの舞台などの演劇ポスターも数多く手がけてる方です。
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誰もやった事のないこの孤独な挑戦を、ぜひ観に行きましょう!
タグ:小宮孝泰
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2013年10月25日

嵐のまっただ中に「三人姉妹」を

「三人姉妹」の初日があきました。終演後の楽屋前通りは、面会の観客や関係者、メイクを落としたばかりの出演者でごったがえしています。3〜4人のガヤガヤした人の山が出演者を囲んであちこちに出来、その人の間を縫うように手応えの空気が流れているのを感じました。
喧噪から離れてこっそり舞台裏へ。装置をのぞきます。
観客席で観るよりはるかに大きく、自信に溢れていて近寄りがたい。役目を終えたばかりの装置はまだ静かに息をしています。

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4幕を休憩なしの1時間50分に凝縮した「三人姉妹」。4幕が吉田美奈子の曲でつながり、人々の希望が苦悩へと変化します。2幕を終えた所でもう目頭が熱くなりました。
初演と演出は変わっていないのに芝居は密度が濃くなってます。充たされない疎外感が深まり、愛情も深まり、誰もがより強く肩を寄せ合っている。再演の面白さです。山崎さんのチェブトゥイキンが面白かったです。正体をなくすほどのアル中にはなりません。それゆえチェブトゥイキンと姉妹の母親との関係が真実味を帯びて見えてくる。新しい発見でした。
短くしていることや、俳優が常に舞台上にいること、観る位置の問題もあります。賛否あるでしょうが、完成度が高く、たった四回しかないのがもったいない。
土日、嵐のまっただ中に、嵐の過ぎ去った後に、ぜひ観てほしい作品です。

華のん企画 「三人姉妹」
場所:東池袋 あうるすぽっと
26日(土)16:00、27日(日)14:00
http://www.canonkikaku.com/information/chekhov.html

posted by gutter at 16:39| Comment(0) | 演劇

2013年10月17日

チェーホフのジタバタを観に行こう

チェーホフが亡くなって百十年が経ちます。チェーホフを二十歳で読んだ時は、何が面白いのかまったくわからなかったんですが、年をとればとるほど噛めば噛むほど面白くなります。何が面白いのかってあらためて考えると、ジタバタなんです。人は三十過ぎ四十過ぎて、自分のできる事できない事がだんだんわかってきますが、なぜかすんなり認めたくないのでジタバタします。チェーホフに出てくる人物も同じなんです。そこには充たされて幸せな人は一人もいなくて、誰もがジタバタしています。
若い頃はジタバタすることがないんで面白さがわからなかったんですね。
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そのチェーホフの秀作、華のん企画の「三人姉妹」が再演します。こういう噛めばの類の話は、出演者の演技も噛めば噛むほど味わいが出るので再演もすごく楽しみです。2年前の初演の打ち上げで、すぐ出演者から再演したいという声が上がったようです。今の日常にもジタバタすることなんて溢れているのに、チェーホフにはどこか底知れぬ魅力があるようです。山崎清介さんが描く「三人姉妹」は、出演者が常に舞台上にいるという張りつめた空間。面白く斬新で刺激的です。
華のん企画 「三人姉妹」
場所:東池袋 あうるすぽっと
10月24日(木)19:00 、25日(金)14:00、 26日(土)16:00、27日(日)14:00
http://www.canonkikaku.com/information/chekhov.html

チェーホフシリーズはパンフレットのイメージを統一しています。
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具体的には同じ布の上に作品に合う小物を置いてその都度撮影。撮影する布の場所は変えてるので柄が違っています。(今回と短編集1+2は再演なので色調を変えただけです。)「三人姉妹」は女性っぽいイメージにしたかったのでちょっとクラシックなブローチにしました。さすがに百年とはいかず、五十年くらい前のものです。ネットなんかでもいいものがなく都内色々まわって西荻窪で見つけました。
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「三人姉妹」の中に、百年後、二百年後の世界を想像する場面があります。チェーホフは覗き見サイズの巷の世界から、一気に百年後の人に想いを馳せ、俯瞰から見ることでジタバタをスケールアップさせています。
いまはチェーホフの時代から百年経ちましたが人はあまり変わってないように思えます。さらに百年後はどうなんでしょう。人は不変なのか、普遍なのか、やはりどうにもならなくてジタバタするのか。
ぜひご覧ください。
タグ:チェーホフ
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2013年10月04日

ロミオとジュリエット観劇ノート

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能登演劇堂で「ロミオとジュリエット」の初日を観てきました。今、なぜか宝塚やらミュージカルやらあちこちロミジュリブームです。そういえば大昔に百合ケ丘に遊びに行った時、ロミオという床屋とジュリエットという美容院が近くに建っていて妄想しました……はどうでもいい事ですが、ロミジュリって簡単に言えば、敵同士の息子と娘が恋に落ちるけど悲しい結末を迎えてしまうという誰もが知ってる物語です。それだけ聞くと分かりやすい話なのですが、これを元のシェイクスピアの戯曲で読むと、つじつまはあってないし必要ないと思われる部分も沢山あるし、おまけに散文詩のようなシェイクスピア独特の長〜い言い回しのオンパレード。さらにシェイクスピアの時代は装置も照明もなく、まっ昼間に上演されていたので、時間経過や場所の状況説明の台詞、例えば「いまは朝で、ここは誰ん家だ〜」なんてのをその都度言わなくっちゃならない。じゃないとお客さんが話についてこれなかったんでしょうか。そのまま戯曲通りやったら3時間半はかかるとか。耐えられません。なので短くするのはもちろん、現代語に直したり、芝居そのものを現代風にしたりして上演するとこが多いんです。
そこいくと無名塾の「ロミオとジュリエット」、チャレンジしてます。もちろんカットして2時間半くらいにしてますが、台詞はいたってオーソドックスなシェイクスピア調。長いです。そんでもって無機質な箱と柱だけのシンプル装置に衣裳小道具はリアルなので、役者の力が試される逃げ場のない舞台です。気をてらったり、〇〇風にやることよりも実はチャレンジなのかも。いばらの道をすすんでます。
でも、なんでしょう。しゃべっている意味のすべてはわからないけどシェイクスピア調の美しい節回しを聴くのは心地良い。そういう台詞のやりとりこそシェイクスピア劇を観る醍醐味のような気がします。役者がこなれてくれば、もっともっと素晴らしい舞台になっていくことでしょう。

シンプルな舞台なのでいつもより広い舞台袖
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能登演劇堂で観る楽しさは、外の自然と一体化したステージを体験できることです。暗幕が閉まっていて前でお芝居がすすんでいる間に、奥で音もなく扉が開いているのですが、その瞬間客席にすごくひんやりした空気がサァ〜っと流れてくるので、目ではわからなくてもふくらはぎでわかります。そして舞台の幅いっぱいに扉が開くと別世界が現れます。照明がついて外の森と一体化した世界に思わず声がでちゃうほど。
シェイクスピアの台詞の美しさと自然を一体化した舞台を体験したい方は、膝掛けもって、ぜひ!10月27日まで
タグ:能登演劇堂
posted by gutter at 20:35| Comment(0) | 演劇